今日の英単語:estrange(istréindʒ)
「出る順で最短合格! 英検®1級 語彙問題完全制覇」によると「estrange」は「~を仲たがいさせる」、Weblioによると、「引き離す、疎遠にする、よそよそしくさせる、遠ざける、遠ざかる」という意味になるそうです。
まずは例文から見ていきましょう:
The argument estranged him from his brother.
sentencedict.com
口論の結果彼は兄弟と疎遠になった。
His behavior estranged him from his brother.
彼の行動の結果、彼は兄弟と疎遠になった。
Their quarrel estranged the two friends.
DeepL翻訳:この喧嘩が原因で、2人の友人は疎遠になってしまった。
He has consistently denied murdering his estranged wife.
DeepL翻訳:彼は一貫して別居中の妻の殺害を否定している。
一貫して人間関係に「estrange」が使用されているのがわかります。また「estranged」にwifeやhusbandが付くと、「別居中の」という意味になることがわかりました。
人間関係の文脈で「estrange」が使用されているのがよくわかったので、心理学関係の論文にこの言葉が使用されているかもしれません。「estrange psychological journal」で検索してみました。
APA PcycNetというウェブサイトで「Mothers’ attributions for estrangement from their adult children.(DeepL翻訳:母親が成人した子供との疎遠の原因となるもの)」というタイトルの論文を見つけました。ちなみに、APAというのはAmerican Psychological Associationの略です。
この論文の概要だけ掲載されているのですが、概要だけで11個の「estrange」を含む概要が書かれています。以下1/3だけ引用します:
Parent–child estrangement is a relational phenomenon associated with significant distress for adult children and especially their estranged parents. Understanding parents’ attributions for estrangement is critical—parents’ willingness to make necessary changes to facilitate reconciliation may depend on how they make sense of their adult children’s reasons for estrangement.
psycnet.apa.org
DeepL翻訳:親子間の疎遠は、成人の子ども、特に疎遠になっている親にとって大きな苦痛を伴う関係現象である。親が疎遠になった原因を理解することは重要で、和解のために必要な変化を起こそうとする意志を持つかどうかは、成人の子どもが持つ疎遠の理由をどのように理解するかにかかっていると考えられる。
人間関係以外に「estrange」の用例が無いか調べるために、「estranged things」を検索してみました。
すると、「On the Concept of “Estrangement” in Science Fiction Theory」(DeepL翻訳:SF理論における「疎外感」の概念について)という論文をチューリッヒ大学のウェブサイトで見つけました。
以下に概要を添付します(「diegetic」は「物語内の」という意味です):
The concept of “estrangement” has been central to sf criticism ever since Darko Suvin defined the genre as creating the effect of “cognitive estrangement“. By going back to the theories of Viktor Shklovsky and Bertolt Brecht, I will show how Suvin, in his approach, intermingles formal, fictional, generic, and receptive aspects of estrangement. Contrary to Suvin’s assessment, it is not sf’s primary formal operation to render familiar things strange, but to make the alien look ordinary, a process I call naturalization. In sf, estrangement mainly happens on a diegetic level, when a marvelous element is introduced into an apparently realistic world.
zora.uzh.ch
DeepL翻訳:ダーコ・スビンがこのジャンルを「認知的疎外感」の効果を生み出すものと定義して以来、「疎外感」の概念はSF批評の中心となっている。ヴィクトール・シュクロフスキーとベルトルト・ブレヒトの理論に立ち返ることで、スビンがどのようにして形式的、フィクション的、一般的、受容的な側面を交錯させて疎外感を表現しているのかを示す。スビンの評価に反して、馴染みのあるものを奇妙にすることがSFの主要な形式的操作ではなく、異質なものを普通に見せること、私が自然化と呼ぶプロセスである。SFでは、一見現実的な世界に驚異的な要素が導入されたときに、主に物語内のレベルで疎外感が生じる。
「intermingle」で「交錯する」、なるほど。上記のSF理論の文脈では「estrangement」は「疎外感」になるのですね。
この概要を読んでいると、映画「惑星ソラリス」を思い出しました。1972年にソ連で製作された映画なのですが、黒澤明さんは「惑星ソラリス」を観ると、「地球に帰りたくなる」と言っていました。同感です。
試しに、「estrangement solaris」で検索すると、「estrangement」の代わりに「alienation」が頻繁に使用されることが分かりました。確かに私としては「疎外感」といえば「alienation」という言葉が最初に思い浮かびます。なので「estrangement alienation difference」を検索してみました。
すると、マイアミの法律事務所のウェブサイトで「Alienation Versus Estrangement: How Is Differential Diagnosis Of Parental Alienation Made?」(DeepL翻訳:疎外感と疎遠感の違い親疎外の鑑別診断はどのように行われるか?)
There are many reasons that children may not want to see a parent after a separation or divorce. Using Johnston’s 2005 Children of Divorce article, Baker (in press) makes a cogent point that most authors make a distinction between “estrangement” and “alienation.” Estrangement refers to a child’s rejection of a parent that is justified “as a consequence of the rejected parent’s history of family violence, abuse and neglect” (Johnston, 2005).
joshiattorneys.com
DeepL翻訳:別居や離婚後、子どもが親に会いたくないと思う理由はたくさんあります。Johnstonが2005年に発表した「Children of Divorce」という論文を参考にして、Baker(in press)は、ほとんどの著者が “estrangement “と “alienation “を区別していることを明確に指摘しています。estrangementとは、子供が親を拒絶することで、それは「拒絶された親の家庭内暴力、虐待、ネグレクトの歴史の結果として」正当化されます(Johnston, 2005)。
In contrast, alienation refers to a child’s rejection of a parent that is unjustified. With that distinction in mind, estrangement is not a diagnosable mental condition because it is normal behavior. Alienation, on the other hand, is an abnormal mental condition because it consists of maladaptive behavior (refusal to see a loving parent) that is driven by a false or illogical belief (that the rejected parent is evil, dangerous, or not worthy of love).
DeepL翻訳:一方、alienationとは、子どもが親を拒絶することが正当化されないことを指します。この区別を念頭に置くと、estrangementは正常な行動であるため、診断可能な精神状態ではありません。一方、alienationは、誤った、あるいは非論理的な信念(拒絶された親は悪であり、危険であり、愛に値しないというもの)に基づいた不適応な行動(愛情ある親に会うことを拒否する)からなるため、異常な精神状態といえます。
第二段落では「alienation」と「estrangement」の両方を疎外感とDeepLは訳していたので英語に戻しました。タイトルでは「alienation」を「疎外感」、「estrangement」を「疎遠感」とDeepLは訳しています。従って心理学的、法的な文脈では「alienation」は「疎外感」、「estrangement」は「疎遠感」とした方が良いのかもしれません。
やはり、「estrange」は「疎遠にする」という意味で使用されることが多いように思います。